「結婚しない人が多い県ほど、結婚式の数も多い」——一見矛盾するこの組み合わせが、47都道府県の実データから素直に出てきます。本記事は 生涯未婚率(男女平均、2020年) と 婚姻件数(2024年) の2軸で47都道府県をクロス分析し、結婚クラスタ4本(婚姻件数・離婚率・生涯未婚率 男性/女性) の総決算として地域構造を読み解きます。
要点を先に整理すると、次のとおりです。
- Pearson相関係数は r = +0.606(中程度の正相関)。**「未婚率が高い県ほど婚姻件数も多い」**という一見矛盾した結果
- 正相関の正体は 人口規模効果。婚姻件数の絶対値は人口にほぼ比例するため、人口の多い都市圏は 未婚率も婚姻件数も両方多くなる
- 両軸高(未婚率高×婚姻多): 東京・大阪・神奈川・埼玉・北海道 ——「首都圏のストック未婚化×フロー大量結婚」のミスマッチ構造
- 未婚率低×婚姻多: 愛知・岐阜・三重・長野・広島 ——「中部・中国の結婚優等」、製造業の安定雇用と地元定着
- 未婚率高×婚姻少: 高知・秋田・青森・岩手・徳島 ——「東北・四国の二重苦」、結婚しない上に人口も少ない
- 両軸低: 山口・宮崎・和歌山・滋賀・鳥取 —— 落ち着いた地方、規模は小さいが未婚率も控えめ
結婚クラスタ4本のおさらい
JapanDataLabでは、結婚にまつわる主要4指標を都道府県別ランキングとして整備してきました。本記事はその4本を 2軸クロス に組み直す総決算です。
| 指標 | 年度 | 全国の見せ場 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 婚姻件数(件) | 2024年 | 全国48.5万組、戦後最少水準。東京76,441 vs 鳥取1,738で44倍 | 婚姻件数ランキング |
| 離婚率(人口千対‰) | 2024年 | 沖縄0.224‰ vs 富山0.113‰で約2倍。北陸が突出して低い | 離婚率ランキング |
| 生涯未婚率(男性、%) | 2020年 | 全国平均26.98%、東京32.15% vs 滋賀23.03%で9.12pt差 | 男性生涯未婚率ランキング |
| 生涯未婚率(女性、%) | 2020年 | 全国平均16.57%、東京23.79% vs 福井12.12%で11.67pt差 | 女性生涯未婚率ランキング |
各指標とも単独では「都市集中」「北陸の鉄壁」など個別パターンを示しますが、2軸を掛け合わせることで初めて見える構造があります。今回は 生涯未婚率(男女平均) をストック指標、婚姻件数 をフロー指標として、ストック×フローの掛け算で地域を分類していきます。
2軸の定義と分析設計
本記事のクロス分析で使う2軸は次の通りです。
- A軸: 生涯未婚率(男女平均) = 男性生涯未婚率と女性生涯未婚率の単純平均(%)。2020年国勢調査ベース。「その地域でどれだけ結婚していない人が累積しているか」のストック指標
- B軸: 婚姻件数(件) = 2024年に届出された婚姻の件数。「その年に新しく結婚した人がどれだけいるか」のフロー指標
A軸を「男女平均」にした理由は、男女別では地域構造が大きく異なるため(男性は関東圏が突出、女性は北陸中部が低位安定)、地域全体の未婚化レベルを1つの数字に集約するためです。男女差そのものは別記事で扱います。
B軸を「婚姻件数(絶対値)」にした理由は、人口規模効果を可視化するためです。婚姻件数は人口にほぼ比例するため、絶対値で見ると都市圏が必ず上位に来ますが、これを未婚率と掛け合わせることで「未婚率高い×婚姻も多い」という一見矛盾した象限が立ち上がります。
サンプルサイズは47(全都道府県)、Pearson相関係数は r = +0.606。中程度の正相関で、統計的にはノイズではなく構造があります。ただしこの相関の正体は人口規模であって、未婚と結婚の因果関係を示すものではありません(後述)。
4象限の代表県
47都道府県を A軸(未婚率男女平均)の中央値と B軸(婚姻件数)の中央値で4象限に分けたとき、各象限の代表5県は次のようになります。
| 象限 | 代表5県 | 物語 |
|---|---|---|
| 両軸高(未婚率高×婚姻多) | 東京・大阪・神奈川・埼玉・北海道 | 大都市の構造ミスマッチ |
| 未婚率低×婚姻多 | 愛知・岐阜・三重・長野・広島 | 中部・中国の結婚優等 |
| 未婚率高×婚姻少 | 高知・秋田・青森・岩手・徳島 | 東北・四国の二重苦 |
| 両軸低 | 山口・宮崎・和歌山・滋賀・鳥取 | 落ち着いた地方 |
象限カウントは 両軸高13県、両軸低14県、未婚率高×婚姻少10県、未婚率低×婚姻多10県 となっており、対角線上(両軸高+両軸低で27県)に集中しています。これが Pearson r=+0.606 の正相関を生んでいる構造です。
主要県の数値スナップショット
| 都道府県 | 未婚率 男女平均(%) | 順位 | 婚姻件数(件) | 順位 | 象限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 27.97 | 1 | 76,441 | 1 | 両軸高 |
| 大阪府 | 24.80 | 3 | 39,387 | 3 | 両軸高 |
| 神奈川県 | 23.68 | 7 | 39,586 | 2 | 両軸高 |
| 愛知県 | 20.75 | 34 | 32,250 | 4 | 未婚率低×婚姻多 |
| 岐阜県 | 18.97 | 45 | 6,263 | 20 | 未婚率低×婚姻多 |
| 長野県 | 20.46 | 38 | 6,728 | 16 | 未婚率低×婚姻多 |
| 高知県 | 25.29 | 2 | 2,071 | 45 | 未婚率高×婚姻少 |
| 秋田県 | 22.34 | 14 | 2,247 | 44 | 未婚率高×婚姻少 |
| 福井県 | 17.74 | 47 | 2,584 | 42 | 両軸低 |
| 滋賀県 | 17.91 | 46 | 5,304 | 25 | 両軸低 |
東京都は 未婚率1位かつ婚姻件数1位、対して福井県は 未婚率47位かつ婚姻件数42位——両極端な2県が「両軸高」と「両軸低」を分かりやすく代表します。
「未婚率高 × 婚姻件数多」象限の構造ミスマッチ
両軸高象限の中心は 東京・大阪・神奈川・埼玉・北海道。「結婚しない人が累積している(高未婚率)」のに「新しく結婚する人もたくさんいる(多婚姻)」——ストックとフローが同時に大きい、首都圏の構造ミスマッチが見えます。
東京都を例に取ると、未婚率27.97%(全国1位)の一方で年間婚姻件数76,441件(全国1位)。1日あたり約209組が結婚届を出している計算ですが、それでも50歳時点で約3人に1人が結婚経験ゼロのまま、というのが現状です。
この象限の構造要因として次が指摘されています。
- 若年人口の流入×単身化: 進学・就職で20代が全国から流入し、母集団が厚いため婚姻件数(フロー)は多い。しかし結婚に至らずそのまま単身で40〜50代に到達するルートも太く、未婚率(ストック)も累積する
- 婚姻市場の二極化: マッチングアプリ・婚活サービスの市場規模は圧倒的だが、それを使う層と「使わないまま単身でOK」と判断する層に分かれる
- 生活コストの高さ: 結婚〜子育てのハードルが高く、フローでは結婚するが、結婚を保留する層も厚くなる(特に男性生涯未婚率は東京32.15%で最高)
- 男女比のアンバランス: 大都市は20〜30代男性人口が女性より厚く、結婚市場の構造的問題が残る
- 再婚需要のフロー寄与: 離婚率も全国上位なので再婚件数が婚姻件数を押し上げる側面もある
要するに、**「結婚する人もしない人もたくさんいる」**のが大都市の素顔。婚姻件数だけ見ても、未婚率だけ見ても、首都圏の本当の姿は浮かびません。
「未婚率低 × 婚姻件数多」象限の優等
最も注目すべき象限が 未婚率低×婚姻多——代表は 愛知・岐阜・三重・長野・広島。「結婚しない人が少ない」かつ「新しく結婚する人も多い」、結婚クラスタの優等地域です。
愛知県は未婚率20.75%(全国34位、低位寄り)、婚姻件数32,250件(全国4位)。岐阜県は未婚率18.97%(全国45位、極低位)、婚姻件数6,263件(全国20位)。中部・中国の県が並びます。
この象限の構造要因として次が指摘されています。
- 製造業の安定雇用: 愛知(トヨタ・自動車)、岐阜(製造業集積)、広島(マツダ・造船)、長野(精密機械)など、製造業集積地域は若年男性の安定雇用が厚い。結婚に至る経済的ハードルが相対的に低い
- 若年層の地元定着: 大学進学・就職で県外に出る比率が首都圏や四国・東北より低く、地元での結婚〜定住の循環が機能
- 持ち家率と住宅コスト: 中部圏は持ち家率が高く住宅コストが大都市より低い。結婚と同時に持ち家取得→定住、というルートが残っている
- 地縁・家族ネットワーク: 三世代同居・近居が大都市より残っており、結婚生活のサポート構造がある
- 適度な都市規模: 名古屋・広島・松本など中核都市があり「出会いの機会」も確保されている。一方で東京ほど単身向け経済圏に呑まれない
特に愛知県は 婚姻件数で全国4位(首都圏4県+大阪に次ぐ規模) でありながら 未婚率は全国34位 という珍しいプロファイル。製造業県の結婚優等構造を象徴する1県です。
「未婚率高 × 婚姻件数少」象限の二重苦
逆に最も厳しいのが 未婚率高×婚姻少 象限——代表は 高知・秋田・青森・岩手・徳島。「結婚しない人が累積している」かつ「新しく結婚する人も少ない」、東北・四国の二重苦です。
高知県は未婚率25.29%(全国2位、東京の次に高い)、婚姻件数2,071件(全国45位、下位3番目)。秋田県は未婚率22.34%(全国14位)、婚姻件数2,247件(全国44位)。**「結婚しないし、人口も少ないので婚姻も少ない」**ループが回っています。
この象限の構造要因として次が指摘されています。
- 若年女性の流出: 結婚適齢期の女性が大都市へ流出し、地元男性の婚姻機会が減少する
- 若年人口の絶対減: そもそも結婚適齢期の母集団が薄く、フロー(婚姻件数)が物理的に細る
- 第一次産業の構造変化: 漁業・農業の世帯後継ぎが結婚相手を見つけにくい
- 離島・山間部の影響: 高知は離島と山間部が多く、徳島・青森・岩手も県土が分散しており出会いの機会が地理的に制約
- 婚姻減のスパイラル: 婚姻が減ると出生も減り、20年後の結婚適齢期人口がさらに減る——時間軸で複利が効いてしまう構造
この象限は単独の対策(婚活支援、移住促進等)では解きにくく、若年雇用・教育機会・交通インフラまで含めた総合戦略でないと逆転しません。地方創生の最難関エリアと言えます。
r=+0.606 の解釈と人口規模効果
Pearson r=+0.606 の正相関を そのまま「未婚率が高いほど結婚件数も多くなる」と読むのは間違い です。婚姻件数は人口にほぼ比例するため、人口の多い都市圏が必ず上位に来ます。そして都市圏は未婚率も高い——この2つの「都市圏で高い」が重なって正相関を作っているだけです。
因果としては逆で、未婚率の高さは結婚件数を減らす方向に効くはずです。これを確認する1つの方法は、婚姻件数を婚姻率(人口千対、‰)に補正することです。
簡易計算してみましょう(人口は2024年推計値ベースの目安)。
| 都道府県 | 婚姻件数 | 人口(万人、目安) | 婚姻率(‰、目安) | 未婚率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 76,441 | 約1,408 | 約5.43 | 27.97(高) |
| 福井県 | 2,584 | 約74 | 約3.49 | 17.74(低) |
| 愛知県 | 32,250 | 約746 | 約4.32 | 20.75(低) |
| 高知県 | 2,071 | 約66 | 約3.14 | 25.29(高) |
人口で割って婚姻率にすると、**東京は依然高い(5.43‰)**が、福井(3.49‰)と高知(3.14‰)の差が縮まる——むしろ未婚率の低い福井のほうが婚姻率は高くなります。47都道府県全体で婚姻率と未婚率の相関を取ると、正相関は弱まり、ゼロ付近〜弱い負相関に転じる可能性が高いです(厳密な算出は別途)。
つまり、r=+0.606 の正相関の正体は人口規模であって、結婚行動の因果関係ではない。これがクロス分析を読むときの注意点です。本記事を「未婚化が婚姻件数を増やしている」と誤読しないようにしましょう。
結婚クラスタ4本の総まとめ
ここまでのクロス分析を踏まえて、結婚クラスタ4本を地域パターンとして総括します。
- 北陸ベルト(富山・石川・福井): 離婚率最低・未婚率最低・婚姻件数も中位安定。三世代同居・持ち家率の高さ・地縁ネットワークが結婚クラスタ全体で正に効く「鉄壁構造」。離婚率では富山が全国最低0.113‰、男性未婚率では福井が全国2位の低さ23.36%
- 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉): 離婚率高め・未婚率最高・婚姻件数最多。ストック未婚化とフロー大量結婚が共存する構造ミスマッチ。結婚する人もしない人もたくさんいるのが素顔
- 中部・中国(愛知・岐阜・三重・長野・広島): 未婚率低×婚姻件数多の優等。製造業の安定雇用と若年層の地元定着が結婚クラスタを下支え
- 東北・四国(高知・秋田・青森・岩手・徳島): 未婚率高×婚姻件数少の二重苦。若年女性流出と人口の絶対減で婚姻フローが細る
- 九州・沖縄: 離婚率高め(沖縄が全国1位)、未婚率は中位、婚姻件数は中位下位。家族構造の流動性は高いが、結婚自体は地縁で行われやすい複雑な構造
- 関西ベッドタウン(滋賀・奈良): 未婚率最低クラス、婚姻件数中位、離婚率低い。大都市通勤×地元結婚の理想的循環
結婚クラスタ4本を貫く最大の発見は、**「都市圏は結婚も離婚も未婚も全部多い」「北陸ベルトは結婚クラスタ全指標で安定」**という構造的差。47都道府県の人口動態は、各県の社会構造・産業構造・地縁構造が結婚クラスタを通じて立体的に表れていると言えます。
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まとめ
- 生涯未婚率(男女平均、2020年)× 婚姻件数(2024年)の Pearson相関は r = +0.606 の正相関
- 正相関の正体は 人口規模効果。婚姻件数を婚姻率(人口千対)に補正すると相関は弱まる
- 両軸高(東京・大阪・神奈川・埼玉・北海道) はストック未婚×フロー大量結婚の構造ミスマッチ
- 未婚率低×婚姻多(愛知・岐阜・三重・長野・広島) は製造業県の結婚優等構造
- 未婚率高×婚姻少(高知・秋田・青森・岩手・徳島) は東北・四国の二重苦、地方創生の最難関
- 北陸ベルト は結婚クラスタ4本(婚姻件数・離婚率・生涯未婚率男女)で一貫して安定の鉄壁構造
最終更新: 2026-05-22。本記事は 2020年国勢調査(生涯未婚率)と 2024年人口動態調査(婚姻件数)をもとに作成しています。次回国勢調査(2025年実施→2026〜2027年公表予定)の確定値が出次第、未婚率を更新します。