死亡数÷出生数 都道府県ランキング2024|秋田5.3倍・47県すべて1倍超

自然増減 都道府県ランキングで見たとおり、2024年(令和6年)に最も人口を減らした都道府県は**東京都(−56,122人)**でした。減少幅では堂々の全国1位です。

ところが、まったく同じ2024年のデータを「引き算」ではなく「割り算」で見た瞬間、東京都は47都道府県中46位——下から2番目の位置まで落ちます。代わりに1位に立つのは、減少幅では28位にすぎない秋田県です。

本記事で使うのは、多死倍率=その年の死亡数 ÷ 出生数という指標です。この記事のために出生数ランキング死亡数ランキングという既存の2本を割り算して作った、いわば「第3の軸」にあたります。新しいデータは一切使っていません。にもかかわらず、出てくるランキングは既存の2本とも、自然増減とも、まるで別物になります。

要点を先に整理すると、次のとおりです。

  • 全国の多死倍率は 2.338倍(死亡1,604,401人 ÷ 出生686,155人)。47県平均は 2.740倍、中央値2.723倍
  • 1倍を下回る県は0県。最小の沖縄県でも 1.315倍で、「生まれる子より亡くなる人が多い」状態に例外は1県もない
  • 1位は秋田県 5.308倍4倍超は秋田・青森・岩手の東北3県のみで、最大/最小の開きは 4.04倍
  • 東京都は「絶対数1位・倍率46位」。同じ現象を差で測るか比で測るかで、評価が正反対になる
  • 地域ブロック平均は 東北3.808倍 vs 関東2.358倍(1.61倍)
  • 「未婚率が高い県ほど多死化する」という直感は成立しない(生涯未婚率との相関は r = +0.096 / −0.117 でほぼ無相関

「多死倍率」とは — 差ではなく比で人口動態を見る

まず用語を定義します。多死倍率は本記事オリジナルの造語で、公的な統計用語ではありません。定義はきわめて単純です。

多死倍率 = その年の死亡数 ÷ その年の出生数

  • 1倍ちょうど … 生まれた人数と亡くなった人数が同じ。人口は自然増減ゼロ
  • 1倍未満 … 出生が死亡を上回る。人口は自然増
  • 1倍超 … 死亡が出生を上回る。人口は自然減

分子・分母ともに厚生労働省「人口動態調査」2024年(令和6年)の値で、年次は完全にそろっています。異なる年のデータを掛け合わせた指標ではないので、年次ズレによる歪みはありません。

なぜ「差」ではなく「比」で見るのか

すでに公開している自然増減ランキングは、同じ2つの数字を引き算(出生数 − 死亡数)したものです。ではなぜ、わざわざ割り算をやり直すのか。

理由は、引き算は人口規模の大きい県が自動的に上位に来てしまうからです。東京都・大阪府・神奈川県といった大都市は、そもそも出生数も死亡数も桁が違います。だから差を取れば、当然その差も大きくなる。自然増減ランキングのワースト10が首都圏・三大都市圏でほぼ埋まったのは、人口減少の激しさを測っていたというより、人口規模を測っていた側面が小さくありません。

割り算は、この人口規模というノイズをきれいに打ち消します。分子も分母も同じ県の人口規模を背負っているので、割った瞬間に規模の効果が約分されて消える。残るのは「その県の人口構造が、どれだけ出口に偏っているか」という純度の高い情報だけです。

これは、生涯未婚率の男女差ランキングで確認した「差と比は別の順位を作る」というパターンの再現でもあります。あの記事では、男性1位・女性1位だった東京都が男女差では36位、男女比では46位まで沈みました。今回もまったく同じことが、まったく別の指標で起こります。同じデータでも、演算子を変えるだけで見える県が入れ替わる——これが本記事のいちばんの主題です。

全国の基準値

項目
全国 死亡数(2024年)1,604,401人
全国 出生数(2024年)686,155人
全国 多死倍率2.338倍
47県 単純平均2.740倍
47県 中央値2.723倍
標準偏差0.686
最大秋田県 5.308倍
最小沖縄県 1.315倍
最大/最小 倍率4.04倍
1倍未満の県0県

全国値2.338倍は、日本全体で、子どもが1人生まれる間に2.3人が亡くなっていることを意味します。100人生まれる間に234人が亡くなる、と言い換えてもいい。47県の単純平均(2.740倍)が全国値(2.338倍)より高いのは、倍率の高い県ほど人口規模が小さいためです。人口の重みを外して県を平等に1票ずつ数えると、日本の姿はさらに厳しく見えます。

分布は、4倍以上が3県、3倍以上が12県、2倍未満が6県。標準偏差0.686は平均2.740倍に対して約4分の1で、47都道府県はかなり広く散らばっています。

多死倍率 TOP10(2024年)— 出口に最も偏った10県

順位 都道府県 地方 多死倍率 死亡数出生数自然増減
1 秋田県 東北 5.308倍 17,4213,282−14,139
2 青森県 東北 4.023倍 20,5115,099−15,412
3 岩手県 東北 4.019倍 19,6774,896−14,781
4 高知県 四国 3.681倍 11,4393,108−8,331
5 山形県 東北 3.590倍 16,8714,699−12,172
6 北海道 北海道 3.384倍 76,66922,658−54,011
7 福島県 東北 3.327倍 27,3388,216−19,122
8 新潟県 中部 3.326倍 33,0599,941−23,118
9 和歌山県 近畿 3.273倍 14,5864,457−10,129
10 徳島県 四国 3.195倍 11,3333,547−7,786

1位は秋田県の5.308倍。死亡17,421人に対して出生はわずか3,282人です。実感に置き換えると、秋田県では子どもが1人生まれる間に、5.3人が亡くなっている。100人の赤ちゃんが生まれるあいだに531人が世を去る計算です。全国値2.338倍の2倍以上、最小の沖縄県(1.315倍)の4.04倍にあたります。

2位青森県4.023倍、3位岩手県4.019倍と続き、4倍を超えるのは秋田・青森・岩手の東北3県だけ。しかも青森と岩手の差はわずか0.004倍で、実質同着です。その2県のさらに1.3倍以上うえに秋田が単独で立っている——秋田の5.308倍は、TOP10の中でも明確な外れ値です。

TOP10の地域内訳は、東北5県・四国2県・北海道1県・中部1県・近畿1県。関東・中国・九州からは1県も入りません。そして東北6県のうち5県がTOP10入り(秋田1位・青森2位・岩手3位・山形5位・福島7位)。外れるのは、仙台という100万都市を抱える宮城県(30位、2.580倍)ただ1県です。

そして注目したいのが**6位の北海道(3.384倍)**です。北海道は自然増減の減少幅では全国3位(−54,011人)と、絶対数でも上位に食い込む数少ない県。絶対数でも比でも上位という、東京型(絶対数だけ)とも秋田型(比だけ)とも違う三番目のパターンを示しています。人口規模が大きく、かつ人口構造も高齢化している——これが北海道の位置です。

多死倍率 BOTTOM10(2024年)— それでも全県が1倍超

順位 都道府県 地方 多死倍率 死亡数出生数自然増減
47 沖縄県 九州 1.315倍 15,45811,753−3,705
46 東京都 関東 1.666倍 140,32984,207−56,122
45 滋賀県 近畿 1.765倍 15,5238,795−6,728
44 愛知県 中部 1.815倍 82,61845,514−37,104
43 福岡県 九州 1.950倍 62,93332,280−30,653
42 神奈川県 関東 1.985倍 102,07951,423−50,656
41 大阪府 近畿 2.034倍 108,53453,351−55,183
40 埼玉県 関東 2.162倍 86,38339,956−46,427
39 兵庫県 近畿 2.226倍 67,95630,535−37,421
38 千葉県 関東 2.226倍 75,15933,763−41,396

最も倍率が低いのは沖縄県の1.315倍。全国唯一の1.3倍台で、2番目に低い東京都(1.666倍)とも0.35ポイント以上離れた単独の位置にいます。沖縄県は自然増減でも減少幅が最小(−3,705人)であり、絶対数でも比でも47位という、47都道府県で唯一「両方の軸で最も人口減少が緩やか」な県です。

しかし、その沖縄でさえ 1.315倍47都道府県すべてが1倍を超えており、例外は1県もありません。この点は後ほど詳しく見ます。

BOTTOM10の顔ぶれは、関東4県・近畿3県・九州2県・中部1県。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、関西圏(大阪・兵庫・滋賀)、中京圏(愛知)、そして福岡・沖縄という、日本の大都市圏と人口流入地がほぼそのまま並んでいます。倍率が低い=人口構造が若い県は、そのまま「若い人が集まっている県」のリストになる、というわかりやすい構図です。

そのなかで異彩を放つのが**45位の滋賀県(1.765倍)**です。滋賀は政令指定都市を持たず、大都市圏の中心でもありません。京阪神のベッドタウンとして子育て世帯が流入し続けてきた結果、東京・沖縄に次いで3番目に若い人口構造を保っています。同じ近畿でも、大阪府41位(2.034倍)・兵庫県39位(2.226倍)・京都府32位(2.418倍)・奈良県29位(2.595倍)・和歌山県9位(3.273倍)と、近畿ブロック内の落差は近畿7県だけで1.85倍。ひとつの地方の中でこれだけ構造が割れているのは近畿だけです。

なお、39位の兵庫県と38位の千葉県はどちらも小数第3位まで 2.226倍で同値。順位は分子・分母の桁が大きい千葉県側がわずかに下位となっています。

多死倍率 47都道府県 フルランキング(2024年)

倍率の高い順に47都道府県すべてを並べます。

順位 都道府県 地方 多死倍率 死亡数出生数自然増減
1 秋田県 東北 5.308倍 17,4213,282−14,139
2 青森県 東北 4.023倍 20,5115,099−15,412
3 岩手県 東北 4.019倍 19,6774,896−14,781
4 高知県 四国 3.681倍 11,4393,108−8,331
5 山形県 東北 3.590倍 16,8714,699−12,172
6 北海道 北海道 3.384倍 76,66922,658−54,011
7 福島県 東北 3.327倍 27,3388,216−19,122
8 新潟県 中部 3.326倍 33,0599,941−23,118
9 和歌山県 近畿 3.273倍 14,5864,457−10,129
10 徳島県 四国 3.195倍 11,3333,547−7,786
11 山口県 中国 3.139倍 21,2726,777−14,495
12 愛媛県 四国 3.112倍 20,4076,557−13,850
13 富山県 中部 2.990倍 15,1845,078−10,106
14 群馬県 関東 2.920倍 27,2519,334−17,917
15 島根県 中国 2.882倍 10,4403,622−6,818
16 長崎県 九州 2.853倍 19,9697,000−12,969
17 大分県 九州 2.818倍 16,7895,957−10,832
18 静岡県 中部 2.816倍 49,10017,439−31,661
19 茨城県 関東 2.786倍 38,94213,976−24,966
20 栃木県 関東 2.759倍 25,5579,262−16,295
21 長野県 中部 2.750倍 28,90810,513−18,395
22 宮崎県 九州 2.741倍 16,4466,000−10,446
23 鹿児島県 九州 2.733倍 24,4268,939−15,487
24 香川県 四国 2.723倍 13,7785,059−8,719
25 三重県 近畿 2.698倍 24,0048,896−15,108
26 山梨県 中部 2.698倍 11,2064,153−7,053
27 岐阜県 中部 2.685倍 26,3929,831−16,561
28 鳥取県 中国 2.598倍 8,0323,092−4,940
29 奈良県 近畿 2.595倍 17,3796,697−10,682
30 宮城県 東北 2.580倍 29,00411,242−17,762
31 石川県 中部 2.474倍 15,0346,078−8,956
32 京都府 近畿 2.418倍 31,28112,938−18,343
33 福井県 中部 2.398倍 10,5104,383−6,127
34 熊本県 九州 2.386倍 24,66010,337−14,323
35 佐賀県 九州 2.359倍 11,3814,824−6,557
36 岡山県 中国 2.341倍 25,57410,926−14,648
37 広島県 中国 2.258倍 35,59915,765−19,834
38 千葉県 関東 2.226倍 75,15933,763−41,396
39 兵庫県 近畿 2.226倍 67,95630,535−37,421
40 埼玉県 関東 2.162倍 86,38339,956−46,427
41 大阪府 近畿 2.034倍 108,53453,351−55,183
42 神奈川県 関東 1.985倍 102,07951,423−50,656
43 福岡県 九州 1.950倍 62,93332,280−30,653
44 愛知県 中部 1.815倍 82,61845,514−37,104
45 滋賀県 近畿 1.765倍 15,5238,795−6,728
46 東京都 関東 1.666倍 140,32984,207−56,122
47 沖縄県 九州 1.315倍 15,45811,753−3,705

全国値2.338倍を上回るのは36位の岡山県(2.341倍)まで。つまり**36県が全国平均より「多死寄り」**で、全国値を下回るのは11県しかありません。これも、倍率の低い県ほど人口が大きいという構造の裏返しです。

例外ゼロ — 47都道府県すべてが1倍超という事実

このランキングで最も重い事実は、実は1位でも47位でもなく、**「47都道府県すべてが1倍を超えている」**ことです。

多死倍率の定義上、1倍未満の県があれば、その県は「生まれる人のほうが多い」県です。2024年、そんな県は1つも存在しません。最も若い沖縄県ですら1.315倍で、しかも1倍まではまだ0.3ポイント以上の距離があります。

これは、自然増減ランキングで確認した「47都道府県すべてがマイナス」と同じ事実を、別の角度から見たものです。ただし、比で見ると印象が変わります。引き算で「−3,705人」と言われるより、割り算で「1.315倍」と言われたほうが、沖縄がどれだけ余裕を残しているかが正確にわかるからです。−3,705人という数字だけでは、沖縄がぎりぎり踏みとどまっているのか、それとも余裕があるのかがわかりません。1.315倍という数字は、「沖縄が1倍に戻るには出生を約3割増やす必要がある」という距離感まで同時に教えてくれます。

そして、47県中41県が2倍以上12県が3倍以上3県が4倍以上。「1倍を割っている県がない」という水準を超えて、日本の大半の県はすでに「2倍以上の多死」という段階に入っています。

【核心】東京は「絶対数1位・倍率46位」——差と比で評価が正反対になる

本記事の最大の見どころがここです。

自然増減の減少幅と多死倍率を、同じ表に並べてみます。

都道府県自然増減(減少幅の大きい順)多死倍率
東京都1位(−56,122人)46位(1.666倍)
大阪府2位(−55,183人)41位(2.034倍)
神奈川県4位(−50,656人)42位(1.985倍)
愛知県8位(−37,104人)44位(1.815倍)
秋田県28位(−14,139人)1位(5.308倍)
高知県39位(−8,331人)4位(3.681倍)
鳥取県46位(−4,940人)28位(2.598倍)
沖縄県47位(−3,705人)47位(1.315倍)

東京都は、人口の減り方の絶対量では日本一でありながら、人口構造の若さでは日本で2番目です。この2つは矛盾しません。東京は死亡数140,329人と全国最多ですが、同時に出生数84,207人も全国最多。分母が桁違いに大きいから、割り算をすると1.666倍という低い値に落ち着くのです。

順位のズレが大きい県を並べると、日本の人口減少が2つのまったく違うタイプに分かれていることがはっきりします。

  • 絶対数では上位、倍率では下位(=規模型): 東京 +45、大阪 +39、神奈川 +38、愛知 +36、埼玉 +35
  • 絶対数では目立たない、倍率では上位(=構造型): 高知 −35、徳島 −30、秋田 −27、島根 −27

東京都の順位差 +45 は、47都道府県で取り得る最大級のズレです。ランキング1位の県が、演算子を変えただけで46位に飛ぶ——同じデータ、同じ年、同じ県で、これほど評価が反転するのは、統計の読み方として覚えておく価値があります。

2つのタイプは、必要な対策が違う

この区別は、単なる数字遊びではありません。

**規模型(東京・大阪・神奈川・愛知・埼玉)**は、人口の絶対数が大きいがゆえに死亡数の絶対数も大きい県です。しかし人口構造そのものは全国で最も若い部類にあります。これらの県で減少幅が大きいのは、人口が多いことの必然的な帰結であって、その県の人口構造が壊れているサインではありません。

**構造型(秋田・高知・徳島・島根)**は逆です。減少幅の絶対数は小さい——秋田は28位、高知は39位、島根と鳥取に至っては下から数えたほうが早い。絶対数のランキングだけを見ていると、これらの県は「あまり減っていない県」に見えてしまいます。しかし比で見れば、秋田5.308倍・高知3.681倍と、日本で最も出口に偏った構造を抱えています。減少幅が小さいのは人口がすでに少ないからであって、状況が良いからではありません。

絶対数のランキングは、構造型の危機を見逃す。これが、既存の自然増減ランキングとは別に多死倍率を作った理由です。逆に倍率のランキングは、規模型の負担の大きさを見逃す。両方を並べて初めて、日本の人口減少の全体像が見えます。

地域ブロック別 — 東北3.808倍 vs 関東2.358倍

47都道府県を8ブロックに束ねると、地域構造がきれいに出ます。

地方平均多死倍率県数
東北3.808倍6
北海道3.384倍1
四国3.178倍4
中部2.661倍9
中国2.644倍5
近畿2.430倍7
九州2.394倍8
関東2.358倍7

首位の東北(3.808倍)と最下位の関東(2.358倍)の開きは1.61倍。ブロック平均の段階でこれだけ差が付きます。

東北6県の平均3.808倍は、全国値2.338倍の1.6倍以上。秋田・青森・岩手・山形・福島の5県がすべて3.3倍以上に固まる一方、宮城県だけが2.580倍で30位。東北は「宮城とそれ以外」で構造が割れているブロックです。

3位の四国(3.178倍)も見逃せません。4県すべてが3倍前後(高知3.681・徳島3.195・愛媛3.112・香川2.723)で、東北のようなばらつきがありません。県数が少ないぶん、ブロック全体が均質に多死化しているという点では四国のほうが徹底しています。

一方、下位3ブロック(近畿2.430・九州2.394・関東2.358)は、いずれもブロック内の落差が大きいのが特徴です。九州は沖縄1.315倍・福岡1.950倍という若い2県を抱えつつ、長崎2.853倍・大分2.818倍という高倍率県も同居。関東も東京1.666倍から群馬2.920倍まで幅があります。ブロック平均が低い地域ほど、内部の格差が大きい——これは「若い県=大都市圏=ブロック内の一部」という構図の裏返しです。

上位構造の背景 — 東北・四国・北海道はなぜ倍率が高いのか

多死倍率TOP10(東北5県・四国2県・北海道1県・中部1県・近畿1県)に共通する背景として、次のような要因が指摘されています。

  1. 若年層の長期的な流出: 東北・四国・山陰は、高度成長期から一貫して進学・就職期の若年層が三大都市圏へ流出してきた地域です。出産適齢期の人口そのものが地域外へ移動しているため、分母(出生数)が構造的に縮み続ける。多死倍率は分母が小さくなるだけで跳ね上がるため、流出の履歴がそのまま倍率に刻まれます
  2. 団塊世代を「送り出した側」であること: 自然増減ランキングでは、団塊世代が都市部へ移動したことで大都市の死亡数が増えている点に触れました。多死倍率で見ると、送り出した側の地域も同じくらい深刻であることがわかります。若い世代を出し続けた地域には、移動しなかった高齢層が残るからです
  3. 出生数の絶対水準が小さすぎる: 秋田県の出生数は年間3,282人、高知県は3,108人、鳥取県は3,092人。分母が3,000人台になると、倍率はわずかな死亡数の変動でも大きく動きます。秋田の5.308倍という突出値は、死亡数17,421人が特別多いというより、出生数3,282人が極端に少ないことの帰結と考察されます
  4. 地方雇用と賃金水準: 後述するとおり、多死倍率は最低賃金と r = −0.501 の負の相関を示します。賃金水準の低い地域から高い地域への移動が続く限り、分母の縮小は自己強化的に続く構造が指摘されています
  5. 秋田の突出は単独の現象: 秋田5.308倍と2位青森4.023倍の差(1.285ポイント)は、TOP10内のどの隣接順位の差よりも大きい。秋田は東北の中でもさらに一段進んだ段階にあると読めます

下位構造の背景 — 沖縄・都市部はなぜ倍率が低いのか

BOTTOM10(関東4県・近畿3県・九州2県・中部1県)についても、要因を整理します。

  1. 若年人口の流入が分母を支えている: 東京・大阪・神奈川・愛知・福岡は、進学・就職期の人口流入が続く地域です。出産適齢期の人口が外部から補充され続けるため、分母(出生数)が人口構造の高齢化より速く減らない。倍率が低いのは出生率が高いからではなく、分母を供給し続けてもらえる立場にあるからだと考察されます
  2. 沖縄の1.315倍は例外的なポジション: 沖縄県は2番目に低い東京都(1.666倍)にも0.35ポイント以上の差をつける単独の47位です。県外からの流入だけでなく、県内の出生数そのものが人口規模に比して大きいことが背景として指摘されています。ただし、その沖縄も2024年に戦後初めて自然減へ転落しており、1倍を割る県が復活する見込みは当面ありません
  3. 滋賀型のベッドタウン効果: 45位の滋賀県(1.765倍)は、大都市の中心ではないのにBOTTOM3に入りました。京阪神への通勤圏として子育て世帯を受け入れてきた地域は、中心都市より若い構造になる場合があります。埼玉県40位・千葉県38位も同じ論理で説明できますが、両県は滋賀ほど低くはなりません
  4. 倍率が低くても、絶対数の負担は最大: 前章で見たとおり、BOTTOM10の県は自然増減の減少幅では上位を占めます。倍率が低いことは「人口が減っていない」ことを意味しません。東京都は1.666倍でありながら年間−56,122人。医療・介護・火葬といった実務の負担は絶対数で決まるため、倍率の低さは行政負担の軽さを意味しない点は強調しておく必要があります
  5. 福岡・沖縄という九州の二重構造: 九州のブロック平均2.394倍は、沖縄1.315倍・福岡1.950倍の2県が引き下げた結果です。長崎2.853倍・大分2.818倍は全国上位に位置しており、九州は1つのブロックとして語りにくい地域です

相関分析 — 未婚率とはほぼ無相関だった

ここからが、本記事でいちばん意外な部分です。多死倍率と他の指標の相関係数(Pearsonの積率相関係数、n=47)を取りました。

対する指標相関係数 r
最低賃金(2025年度)−0.501
離婚率(2024年)−0.446
純金融資産(2019年)−0.147
生涯未婚率・女性(2020年)−0.117
生涯未婚率・男性(2020年)+0.096
生活保護受給率(2023年度)−0.080
ふるさと納税受入額(2024年度)+0.028

未婚率仮説は成立しない

「未婚の人が多い県ほど子どもが生まれず、多死化するはずだ」——これは非常に直感的な仮説です。ところがデータはこれを支持しません。

生涯未婚率(男性)との相関は r = +0.096生涯未婚率(女性)との相関は r = −0.117。どちらもほぼゼロであり、しかも符号が逆です。男性側で見ればわずかに正、女性側で見ればわずかに負——これは「相関がない」ことの典型的な現れ方です。

理由を考えると納得できます。生涯未婚率ランキングで1位だったのは東京都(男性32.15%)でした。多死倍率で東京は46位。一方、多死倍率1位の秋田県は生涯未婚率では男性12位と、上位ではあるものの突出してはいません。未婚率が最も高い県が最も多死な県ではなく、むしろ逆なのです。

これは、未婚率と多死倍率が別の時間軸を測っているためだと考察されます。生涯未婚率は「いま50歳の人が結婚したかどうか」の記録であり、多死倍率は「いまこの1年に生まれ・亡くなった人数」の比です。前者は数十年前の婚姻行動、後者は現在の人口構成——同じ「人口問題」というラベルで括られていても、測っているものが違います。

効いているのは最低賃金、ただし因果ではない

相関が最も強く出たのは最低賃金(2025年度)r = −0.501。賃金の高い県ほど多死倍率が低い、という中程度の負相関です。

ただし、これを「賃金を上げれば子どもが生まれる」と読んではいけません

最低賃金は東京・神奈川・大阪・愛知といった大都市圏で高く、地方で低くなります。多死倍率も同じ大都市圏で低く、地方で高くなります。つまり両者が連動して見えるのは、どちらも「若年人口がどこに集中しているか」という同じひとつの事実を、別の角度から測っているからです。賃金が人口構造を作ったのではなく、人口と経済活動の集中という共通要因が、賃金と多死倍率の両方に同時に現れていると読むのが妥当でしょう。

すでに公開している最低賃金 × 自然増減のクロス分析では r = −0.823 という強い相関が出ましたが、あちらは絶対数どうしの比較なので、人口規模という共通要因がそのまま相関を押し上げています。多死倍率は人口規模を約分して消しているため、同じ組み合わせでも相関が −0.823 から −0.501 へ大きく下がる。この差そのものが、「相関の一部は人口規模が作っていた」ことの証拠になっています。

離婚率との負の相関も人口構成の反映

離婚率(2024年)との相関は r = −0.446。「離婚が多い県ほど多死倍率が低い」という、そのまま読むと奇妙な結果です。

これも人口構成で説明できます。離婚は当然ながら結婚した人にしか起こらない出来事であり、若い世帯が多い地域ほど発生しやすくなります。離婚率が高い県は「家族が壊れている県」というより「若い世帯が多い県」であり、若い世帯が多ければ出生数も多く、多死倍率は下がる——この経路で負の相関が生じていると考えられます。婚姻件数ランキングでも同様に大都市圏が上位を占めており、婚姻・離婚・出生はいずれも「若年人口がどこにいるか」の関数になっています。

経済的な豊かさは効いていない

一方、純金融資産(2019年)は r = −0.147生活保護受給率(2023年度)は r = −0.080ふるさと納税受入額(2024年度)は r = +0.028 と、いずれもほぼ無相関でした。

つまり、「豊かな県ほど子どもが生まれている/貧しい県ほど多死化している」という単純なストーリーは成立しません。効いているのは資産や福祉の水準ではなく、年齢構成そのものです。多死倍率は経済指標というより、その県の人口ピラミッドの形をほぼダイレクトに映す鏡だと言えます。

なお、これらの相関はすべて年次が完全にはそろっていません(多死倍率2024年、最低賃金2025年度、離婚率2024年、生涯未婚率2020年、純金融資産2019年、生活保護受給率2023年度)。相関は因果ではなく、あくまで参考的な対応関係として受け止めてください。

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まとめ

  • 多死倍率(死亡数 ÷ 出生数)の全国値は 2.338倍(死亡1,604,401人 ÷ 出生686,155人)。47県平均は2.740倍
  • 1倍未満の県は0県。最小の沖縄県でも 1.315倍で、例外は1県もない
  • 1位は秋田県 5.308倍。子どもが1人生まれる間に5.3人が亡くなる計算で、4倍超は東北3県のみ。最大/最小は 4.04倍
  • 東京都は「自然増減の減少幅1位(−56,122人)・多死倍率46位(1.666倍)」。順位差 +45。絶対数で見るか比で見るかで評価が正反対になる
  • 地域ブロック平均は 東北3.808倍 vs 関東2.358倍(1.61倍)。ブロック平均の低い地域ほど内部の落差が大きい
  • 未婚率との相関はほぼゼロ(男性 r = +0.096 / 女性 r = −0.117)。効いているのは最低賃金 r = −0.501離婚率 r = −0.446 だが、いずれも「若年人口の集中」という共通要因の反映であり、因果関係ではありません

最終更新: 2026-08-16。本記事は厚生労働省「人口動態調査」2024年(令和6年)の出生数・死亡数から算出しています。「多死倍率」は本記事独自の呼称で、公的な統計用語ではありません。厚生労働省が次年度の人口動態統計を確定公表した際に数値を更新します(例年8〜9月公表)。

出典

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本記事のデータ・図表は、出典を明記いただければ引用・転載いただけます(掲載数値は公的統計に基づく事実情報です)。引用時は以下をご利用ください。

「死亡数÷出生数 都道府県ランキング2024|秋田5.3倍・47県すべて1倍超」JapanDataLab(2026/08/16)https://japandatalab.com/posts/tashi-bairitsu-todofuken/

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